「旋律の原風景」 〜haruka nakamura インタビュー

雨と休日のインタビュー・シリーズ第3回。今回は、2ndアルバム『twilight』をリリースするharuka nakamuraさんへのメール形式でのインタビューです。そして、リリース元のKitchen.レーベルを主宰する、Ricks AngさんとApril Leeさんのおふたりにもお話しを伺いました。
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  • haruka nakamura プロフィール --
     2007年『Afterglow』*1(akira kosemuraとのスプリット・アルバム)、2008年1stソロ・アルバム『grace』*2をscholeより発表。 ソロ活動の他にも、自身主宰のバンド「kadan」において1st Album『CASA』*3をリリース。 2010年3月にはsuper deluxeでの単独特別公演を成功させる。様々なコンピレーション、リミックスアルバムなどへの参加や、H.P.FRANCEのwebsiteにおける音楽を制作するなど独自の活動を行う。2010年7月15日、2年ぶりの2ndソロ・アルバム『twilight』*4をシンガポールのレーベルKitchen.からリリース。今後、故nujabes氏と制作していたhydeout productionsからの3rdアルバムも控えている。

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    いつかこんな光景を観て聴こえてくる音を作りたい。

    - 最初に音楽を作り始めたときのことを教えてください。

     記憶にあるのは、 午後のレッスン室や、自宅のアップライトピアノで宿題の楽譜を開いて譜面台に置き、でもそれは見ずに好きな様にずっと弾いていました。


  • *1 『Afterglow』


    *2 『grace』


    *3 kadan『CASA』


    *4 『twilight』

ただ気持ちの良い旋律を。指が動くまま。 練習の合間にというよりも、いつでもそうしていました。 だからいつまで経っても、本は先に進みませんでした。 古い幼少の記憶です。 その頃の状態に戻りたい思いがあります。 本当に純粋に、シンプルに音楽と一つだったあの頃に。 今回のアルバムでは、ピアノ演奏においてその事を最も考えました。

- 1st『grace』と2nd『twilight』の違いと関係性は。

 描いた情景や想い出の光景を音にするのは僕にとってとても自然な事です。 『grace』は故郷への郷愁を。 『twilight』では自分の旋律の原風景を。 どちらも大切にしている景色を描いています。

- 今回の『twilight』のような、音数が抑えられた音楽を作りたいと思うようになった、きっかけというか影響を受けたもの(音楽に限らず)はどんなものですか?

 『twilight』で描いた光景。 それはとても静かな場所でした。 意識的に抑えたというより、音を重ねる必要性を感じませんでした。 シンプルな物、余白や余韻に特別な美しさを感じている事もあると思います。

- 作曲のインスピレーションはどういった対象から来るものですか?

 日常で刺激を受けた様々な全ての要素がインスピレーションになっています。 それは本だったり、映画や写真、絵などの芸術だけではなく、 誰かと食事をしている時間や、そこでの会話。 そして美しい景色だったり。 そうしたアンテナが引き寄せて溜め込んだ様々な要素が、 自然に音にアウトプットされたらと思っています。 僕にとっては、日々が音楽を形成しています。

- 美しい夕暮れのイメージが、nakamuraさんの中にあると思うのですが、それはどんな夕暮れだったのですか?

 10代の時、田舎の家の窓辺から山へ沈む夕暮れを眺めていました。 陽は沈み、街明かりが灯り。 星が瞬き始め、人々は家路へ。 そんな美しい夕日を眺めながら、でもその時の僕にはその光景に寄り添える音楽が聴こえませんでした。 いつかこんな光景を観て聴こえてくる音を作りたい。 そして僕は音楽を始めて、 それからその光景は大事な情景となり。 こうして今、『twilight』が生まれました。

- "twilight"を日本語にするとしたら?

 「トワイライト」というこの言葉の響きが好きです。 薄青い夕方や、暮れていく街が自然に浮かびます。 読み方は変えず、カタカナが良いですね。

- シンガポールのレーベル、Kitchen.からのリリースですが、nakamuraさんが思うこのレーベルの素晴らしいところを挙げていただけますか?

 Kitchen.は音楽だけでなくweb design、映像、写真など様々な分野で 高いクオリティと独自のセンス溢れる美しい作品を制作しています。 音楽レーベルとしても、彼らは僕の要望に余すことなく答えてくれました。 今回のコンセプトにも共感してくれましたし、 素晴らしいアートワーク、美しいspecial site。 僕が撮り溜めていた映像でMVまで制作してくれました。 彼らとの作業なら全てを安心して進めていけると確信していたので、 自分にとって最も大事なアルバムを一緒に作る事が出来ました。 大事な友人としても、彼らの仕事を尊敬しています。

-『twilight』に参加されているミュージシャンについて、ご紹介願います。

isao saito - drum
 このアルバムを作る1年前から、 彼とセッションを重ね、色々な場所を旅しました。 楽曲のほとんどは彼とのスタジオセッション録音です。 彼のおかげでこのレコーディングは良い1日になりました。 このアルバムにおいて彼の存在は欠かすことは出来ません。 彼との出会いが無ければ、『twilight』は完成していませんでした。

ARAKI shin - saxophone
 ARAKIさんには数多くの楽曲でTenor & Soprano Saxophones, & Fluteだけでなく 素晴らしいHorn Arrangementもして頂けました。 特に「harmonie du soir」 や「dialogo」におけるアプローチは 初めて聴いた時、あまりに美しくて感動しました。 ARAKIさんとはライブなどで何度かご一緒してきましたが、 今回初めてこうしてコラボレーションを作品に残せた事がとても嬉しいです。

Akira Uchida - soprano saxophone
 内田君はkadanでもsaxophone演奏やHorn Arrangementをしてくれています。 彼が演奏すると曲は昇華され、輝きが生まれます。 参加してくれた楽曲も、初めから彼の為に作られた曲の様に感じる程に、 その旋律の気品が、凛とした美しさを灯しています。 彼は音楽会『Baroque voice』を主宰していて、教会などで演奏しています。

Rie Nemoto - violin
 このアルバムにおいて、彼女の優しく深く包み込む音色はとても大事な存在です。 幕開けと、終焉の曲で参加して頂きました。 彼女の音の温かい佇まいが、自然に曲に引き込ませてくれます。 普段はオーケストラなどで活躍されています。

April Lee - vocal
 aspidistraflyの二人が日本に来た時。 僕の自宅で「twilight」を作りました。 アコースティックギターと歌とで。 夕暮れからキャンドルを灯して夜まで作っていた光景をよく憶えています。 アルバム制作の初期構想から、彼女の歌曲を収録する事は決めていました。

Janis crunch - vocal
 janisには最後の曲で歌って頂きました。 当初この曲は収録予定では無かったのですが、 アルバム制作の最終段階で、最後にゆっくりと眠りにつくような 子守唄のような閉幕の歌が出来たので、 彼女に歌って頂きました。 唯一無二の歌い手で、才能溢れる作曲家でもあります。 今後ソロとしての彼女の作品がとても楽しみです。

(2010年7月12日 メール・インタビューにて)

最後に、雨と休日のセレクションの中からおすすめアルバムをご紹介いただきました。

→■ Kitchen.レーベル・インタビュー へつづく