気怠さと人生を共にするような、ため息にも似た歌声。フラジャイルな男の姿。その中性的な魅力。
知らずに聴けば女性が歌っているのかと思うかもしれません。ジャズ・トランペッターとして活動していたチェット・ベイカーが、全曲でその歌声を披露した作品。アルバムタイトルもシンプルに『Sings』。ドラッグに溺れ退廃的な人生を送ったチェットは、晩年こそ作品にもその傾向が見られましたが、50年代の若き日の録音では、ロマンティックこの上ない歌と演奏を盤面に刻み続けました。テンポが極端に速い曲は無くアドリブを追求するような所謂ジャズ的な要素も薄い、ジャズの歴史の中では特殊と言えるアルバム。しかしその個性がもたらした後世への影響は計り知れず、軽妙なアメリカ西海岸ジャズ文化が産んだ美しい結晶のひとつであると言えます。
01. That Old Feeling
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02. It's Always You
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03. Like Someone In Love
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04. My Ideal
05. I've Never Been In Love Before
06. My Buddy
07. But Not For Me
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08. Time After Time
09. I Get Along Without You Very Well
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10. My Funny Valentine
11. There Will Never Be Another You
12. The Thrill Is Gone
13. I Fall In Love Too Easily
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14. Look For The Silver Lining
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チェット・ベイカー (vo, tp)、ラス・フリーマン (p, celeste)、カーソン・スミス (b)、ボブ・ニール (ds) 他
録音:1953、54、56年(モノラル録音)
total playing time: 44:25
歌詞・解説付き。高音質SHM-CD仕様(すべてのCDプレイヤーで再生可能)での2016年再発盤。