本作は古楽器演奏の楽しみのひとつを大いに味わえる1枚と言えます。
「ポリフォニー(多声音楽)」という音楽用語をご存じでしょうか。ルネサンス時代に栄えた作曲スタイルで、旋律と伴奏という主従の関係ではなく、複数の独立した旋律がお互いに絡み合いながら進んでいく音楽です。一度聞いただけでは「??」となる音楽ですが、聴き込んで旋律を覚えていくうちにその面白さがわかってきます。
本作に収録されている楽曲の大半はもともとあった曲をそのまま演奏しているのではなく、16世紀の声楽作品を、緻密な研究と仮説に基づいてビウェラとリュート用に編曲したものを演奏しているというやや特殊な成り立ちを持ったアルバムです。演奏するのは日本のリュート奏者の第一人者、佐藤豊彦とその弟子によるメンバー。当店でも『Plainte 嘆き - Viol music of French』(完売)が好評をいただいた秋山幸生がリュートで参加しています。楽曲は淡々と進みつつ時折化学反応のような変化を見せ、リスナーはふたつの旋律の付かず離れずを探りつつ鑑賞していきます。それはある種爽快!
01. クレメンス・ノン・パパ(1510/15-1555/56):元気はつらつ、おいらは若い
02. フランチェスコ・ダ・ミラノ(1497-1543):ファンタジア第7番
03. トマス・クレキオン(1490頃-1557頃):或る陽気な牧童
04. フランチェスコ・ダ・ミラノ:ファンタジア第5番
♪
05. ハインリッヒ・イサーク(1450頃-1517):さらば恋人よ
♪
06. フランチェスコ・ダ・ミラノ:ファンタジア第6番
♪
07. クレマン・ジャヌカン(1485頃-1558):鳥の歌
♪
08. ヴァレンティ・バクファルク(1507頃-1576):ファンタジア第VII番
♪
09. クローダン・セルミジ(1490頃-1562):僕が死にそうだって言ったね
10. ヴァレンティ・バクファルク:ファンタジア第I番
11. ピエール・サンドラン(1490頃-1561以降):甘美なる回想
12. フランチェスコ・ダ・ミラノ:ファンタジア第4番
13. クレマン・ジャヌカン:さあ、おいで恋人よ
14. ヴァレンティ・バクファルク:ファンタジア第II番
15. クレメンス・ノン・パパ:敢えて選ぼう無情なる死を
♪
佐藤豊彦(6コースリュート)、高野美佐子(ビウェラ)
櫻田亨(ビウェラ)、秋山幸生(6コースリュート)
録音:2021年
total playing time: 51:46