日本を代表する作曲家、武満徹が残した映画やドラマのための音楽には多くのファンがいます。特に実相寺昭雄監督によるドラマ『波の盆』の人気は高く、廃盤となっているサントラにも高値が付くほど。笠智衆主演によるドラマはハワイに移住した日系人家族が戦争によって経験した悲しみと愛を描いたもので、「武満がこんな美しい曲を作っていたのか」と驚くこと必至です。

その他収録されているのは、吉永小百合主演の01「夢千代日記」、静と動のコントラストが美しい壮大な組曲のような02「太平洋ひとりぼっち」（主演は石原裕次郎）、ボクサーのドキュメンタリーという緊迫と安堵の03「ホゼー・トレス」、井伏鱒二原作の原爆がテーマとなった04「黒い雨」、安部公房原作でラヴェルの「ラ・ヴァルス」を思わせる05「他人の顔」など。それら武満の作品を日本最高峰であるNHK交響楽団の演奏で聴ける本CD。サントラらしく行進曲やシリアスな曲調が含まれるなど起伏があるのは当然ですが、フルオーケストラの音の波に呑まれるように「タケミツ・トーン」と呼ばれた独特の響きを堪能できる１枚です。


01.「夢千代日記」　Yumechiyo nikki　♪　

02.「太平洋ひとりぼっち」　Alone on the Pacific　♪　

「3つの映画音楽」 3Film Scores
03.「ホゼー・トレス」Jose Torres: Music of Training and Rest
04.「黒い雨」Black Rain: Funeral Music　♪　
05.「他人の顔」　Face of Another: Waltz　♪　

06.「波の盆」Nami no bon　♪　

指揮：尾高忠明　管弦楽：NHK交響楽団
ハーモニカ：南里沙、ウクレレ：鈴木大介、ギター：大坪純平、シンセサイザー：山崎燿
録音：2022年

total playing time: 46:07