雨と休日のインタビュー・シリーズ、記念すべき第1回はschole recordsの主宰として、また日本のエレクトロニカ・シーンを代表するアーティストとして活躍中の小瀬村晶氏にご出演いただきました。scholeと雨と休日について「音楽と一日」というテーマでお話を進めていく中で、新作『Polaroid Piano』の制作過程についてもお聞きしました。
→『Polaroid Piano』商品ページ
→ schole web site
- まず、scholeのコンセプトについてお聞きします。マガジンや、デザイン、写真など多角的なアプローチを取るscholeのコンセプトというかスタイルは、どういった考えから生まれたものなのでしょうか?
もともと1stアルバム*1を作っている時に考えてたことが最初のコンセプトになってるんです。つまり、ちょっと外に出て、じっと耳を澄ませているだけで、わざわざ何かを聴かなくても十分なくらいに世界には音楽が溢れているっていう実感で。例えばそよ風に吹かれて木々が揺れる音だったり、子供たちの笑い声だったり。そういう、気にしなければ自然と通り過ぎていくような、ごく当たり前の日常のなかの瞬間瞬間にも、本当に十分なほど心を豊かにしてくれる音が溢れているんだという実感です。ただそれにしては1stはちょっと濃い(個人的な)内容になったから、もうちょっと開けた形でやりたかったんです。
例えば、別に音楽をそんなに好きじゃない人でも、コンセプトに共感してもらえるんじゃないか、っていうことでフリーマガジン『schole magazine』*2を始めたんです。フリーマガジンだったらデザインとか写真に興味を持ちやすいから、手に取ってもらえてきっかけになりやすい。マガジンとレーベルを両方やって、マガジンからCDに興味を持ってくれたら、広がった世界が見えてくる。僕の周りにフリーマガジンをやろうという仲間がいたから、自然な形で始められました。
大袈裟なことをいえば、音楽に興味のない人が音楽を好きになるきっかけになるような、いろんな人が手を出しやすい開けたスタンスでやりたかったんです。音楽を好きじゃない人が音楽雑誌は買わないんですよ、絶対。
- あー、そうですね。
そういうことなんですよ。ただ知らないだけで、知ったらすごく楽しめる。じゃあそれをどうやって世の中に広めていこう、どうやったら提案できるだろうと。闇雲にCDを作って売ったら、それは結局、音楽を知ってる人しか買わないじゃないですか。根本的にそこに架ける橋をどうやって作ったらいいかっていうところで、フリーマガジンを始めたんです。
- 今日は「音楽と一日」というテーマでお話を進めていこうかと思うんですが…。
音楽と一日という観点は、scholeにとってもすごく合ってると思うんです。例えばうちのタイトルでも、これは朝聴いて欲しいとか、夕方聴いて欲しいとか、夏とか春先とか、作る側がある程度意識してます。ジャケットのイメージとか、アーティスト側から意見を出す人も多いんです、scholeは。
僕の頭の中にあるのは「音楽半分、ジャケット半分」なんですよ。その意味は、別に音楽は半分でいいってわけじゃなくて、音楽っていうのはそれだけで成り立っているものだから、そこにジャケットが加わることで2倍のものになるというか。もう一つ解釈が加わって、もっと伝わりやすくなるというか。ジャケットの形状によっても印象は変わってきますし。写真を使うのかグラフィックを使うのか。写真もトーンとか質感によって映える紙も違うし。アーティストの意向も踏まえてその都度考えながらやっています。
- なるほど。例えば昔のアナログレコードは大きいから、それだけで部屋に飾るようなアイテムになったわけじゃないですか。それと似たようなことは考えますか?
あ、それは必ず考えます。買ってから、部屋に飾れるものであってほしい。ちゃんと平置きして欲しい(笑)。
- 棚に縦に入れずに(笑)。今までで一番気に入っているジャケットはどれですか?
『Tiny Musical』*3ですね。あの写真はなかなか撮るのが難しいだろうと(笑)。あれはもう、自分の中では一生に一枚の写真です。