静かに歌う。苛立ちも歯痒さも閉じ込めず、でもただ静かに歌う。歌の偉人たちの言葉を借りて。自分のために。自分と同じすべての人に。
ボサ・ノヴァ〜ブラジル音楽を歌う吉田慶子。前作
『サンバ・カンソン』と同じ黒木千波留のピアノ伴奏のみで録音された、優しくチャーミングな歌声によるアントニオ・カルロス・ジョビン、ヴィニシウス・ヂ・モライス、シコ・ブアルキ等、ボサ・ノヴァ以降のブラジル音楽集。録音は2011年。各曲に吉田さん自身による解説をいただきました。
吉田慶子 keico yoshida ( vocal )
黒木千波留 chiharu kuroki ( piano arrangement )
01. Violão vadio ヴァガブンドのギター(Baden Powell e Paulo César Pinheiro)
♪
もう一度いっしょに わたしとギター
ただゆっくりとさまよい 歌ってゆく
エリゼッチ・カルドーゾの歌声で何度もくり返し聴いた
思い出深い歌です。
02. O que será ウ・キ・セラ(Chico Buarque)
♪
シコ・ブアルキの歌詞は難解で
意味だけを追いかけると頭がこんがらかってしまいます。
だけど、彼の音楽は言葉を超えたもっと大きなもの。
何もわからなくとも、聴くと心がふるえます。
03. Demais あまりにも(Tom Jobim)
♪
飲み過ぎて ふざけすぎて
軽薄でひどく荒れた日々を送っているのは
届かないあなたへの愛があまりに大きくて
切なくて 悲しいから
怒りも 憎しみも すべては悲しみから
04. Valsa de Eurídice ユリディスのワルツ(Vinicus de Moraes)
♪
たくさんの名曲を生み出したヴィニシウス・ヂ・モライスの戯曲
「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」より。
ヴィニシウスはこの美しいメロディを、パリで書き物をしている
時に思いついたのだそうです。
わたしは目をつむってまるくなって、ピアノの音に入り込む
ような感覚のなかで、いろんな「ラ」を歌いました。
05. Diga ヂーガ(Vicente Paiva e Fernando Martins)
ジョアン・ジルベルトと娘のベベウがライブでデュエットした歌。
つい何度もくり返してしまう、終わらない一曲です。
06. Canta, canta mais 歌って もっと(Tom Jobim)
黒木千波留さんのピアノソロ。
当初、私は歌う予定でした。でも歌えませんでした。
理由はわかりません。どうしても歌えなかったのです。
07. Vou por ai ヴォウ・ポル・アイ(Baden Powell)
自分がどこにいるのかわからない
歩き 立ち止まり
自分がどこへ行くのかもわからない
この歌を思い出すと、少し胸がちくっとなります。
08. Moça flor モサ・フロール(Durval Ferreira e Lula Freire)
♪
美しい花のような娘への愛を歌ったドゥルヴァル・フェヘイラの名曲。
黒木さんのピアノは音色だけでなく、音と音の間の静けさが美しいなあと
いつも思います。
09. Soneto da separação 別れのソネット(Vinicius de Moraes)
♪
録音を終えて一言、黒木さんが「お経のようだね。」と言いました。
私もそう思いました。
()内は作者。
total playing time: 36:26
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keiko yoshida web site
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