【『FOLKLORE』への言葉 】

「青木さんと会ってみたい。一緒に演ってみたい。」2011年の暮れだったろうか、今いちばん気になるミュージシャンは?という話題になった際に、ハルカ君の口からそう発せられた。その共演が実現したらすごいことだ、そして、いったいどんな音楽になるのだろうか、という果ての無い期待が僕の中で広がっていった。タイミングよく翌年の雨と休日の3周年記念にライヴ・イベントを画策していたところだったので、じゃあ、ということで二人の初共演の場を自分が作ることとなった。

ふたりの演奏を聴いたとき、本質というか、目的地のようなものを僕は感じた。あぁ、彼らは演奏することによって自分たちのルーツを探しているんだ、と。日本のミュージシャンが折に触れ突き当たる、強固な音楽伝承文化のないこの国で音楽を作っていくことの不安定さ。その難しさに立ち向かっているのだ、と。出会うべくして出会ったような相性の良さを感じたし、音を発すること、間を作ることで分かり合うという、その事実をまじまじと見せつけられた思いだった。届けられたアルバムのタイトルが「フォルクローレ」であったのも納得がいく。東京と青森。別々の場所で生まれ育ったふたりが、今この時に出会い、同じ方法で還る場所を探している。それは強大で確かな奇跡と言いたい。やがて辿り着く場所が別々であったとしても、だ。(文:店主)

【『FOLKLORE』に繋がる5枚 - AOKI, hayato 選/文 】

  • Jean Ritchie / Ballads from her appalachian family tradition
    ジーン・リッチーの歌声は連れてくる。それはアパラチアの谷あいのせせらぎ。いにしえの家族の団らん。人びとのよろこび、かなしみ。
    ジーン・リッチーはいまわたしに向かって歌う。その歌はとても歳をとっていて、同時にとても若々しい。
    (※店主注:FOLKLORE初期ライヴツアーの会場SEとして流していたCDです)
  • 細野晴臣 / 銀河鉄道の夜
    このサウンドトラックを聴く人は、またたく間に銀河鉄道への旅にいざなわれる。
    アニメーションのための音楽ではあるが、これはひとりの音楽家が『銀河鉄道の夜』とじっくり対話をした時間の結晶だと感じる。まるで地下深くで人知れず輝く鉱石のような。
    この音楽を宮沢賢治が聴いたら、どんな言葉を残すのだろうか。
  • 小沢健二 / 球体の奏でる音楽
    「この旅が自分を成長させてくれる」という意思が、歩く姿にあらわれている旅人は美しい。
    リュックには古い地図。その地図には偉大な先人たちが、それぞれのやり方でメモを書き残していて、旅人に確かな道を示してくれる。
    行き着く先は、山だろうか、海だろうか、それとも街だろうか。
  • Charlie Haden & Hank Jones / Steal Away
    天井の高い、木で組まれた部屋にはピアノとウッドベース。ふたりの演奏家はアメリカ音楽の薪を暖炉にくべて、心から演奏を楽しむ。
    やがて朝が来て、薪は灰になり地にまかれる。それはゆたかな肥料。いつの日かソングの芽は顔を出し、聴き手の耳を通じて開花する。
  • Simon & Garfunkel / Wednesday Morning, 3A.M.
    これはふたりのデビュー・アルバム。野心にあふれ、とてもはりきっている。そして同時に、静謐さもそなえている。
    青春はただ一度だけ。その厳粛で残酷な事実が、このレコードをより美しいものにしている。
    アルバムに寄せたアート・ガーファンクルの「手紙」も、大切な「一曲」だ。(日本盤ではその和訳を読むことができる)

【『FOLKLORE』に繋がる5枚 - haruka nakamura 選/文 】

  • Chisato Ohori / toanowa
    光とはなんだろう。
    長い間、それを探していたのだけれど。
    光ある風景。輝ける何処か。
    探しものはこの音楽で見つかって、今でもその道を優しく照らしている。
  • Iwamura Ryuta / Sunday Impression
    日々に寄り添うこと。
    一日を大切に生きること。
    その時間を見つめ直すこと。
    本当の豊かさを知ること。
  • Jan Garbarek & The Hilliard Ensemble / Officium
    冬の山梨で聴いていた。
    小淵沢。清里。古い教会。夕方の松明。
    凛とした静寂。なにより美しい沈黙。
    神に捧げている音。
    あの場所でこの響きを聴き、12 & 1SONGを作った。
  • Lovasz Iren / Egi Hang - Sacred Voice
    最後は「Psalmus CxlVIII」という曲で終わる。
    その曲を数えきれないほどリピートして聴いていた。
    旅からの帰りの電車で。一年の終わりの日々で。
    大切な時間を共に過ごした。
    人生の終わりの時は、こんな音楽が聴こえていて欲しい。
  • ARAKI Shin / A SONG BOOK
    どれほどの月日が経っても、その輝きを失わない。
    あふれる星の中で、唯一つ憧れるその光。
    彼が同じ時代に居て、この音楽を聴けて良かった。
    折に触れて反芻する。聖書のような存在。

【『FOLKLORE』と共鳴する人々 】

  • 西森千明 / かけがえのない
    星空の篠山で。
    あの日、聴いた「とある日」
    歌い継がれてきたかのような、うた。
    「とある日」は唱歌になるといい。
    ずっとずっと、うたがそこにあるように。
    その 灯が消えぬように。(文:haruka nakamura)

  • Sakanoshita Norimasa / HORIZON
    窓の音楽。鏡の音楽。ギターソロ、ピアノソロ… 「ソロ」という形容がつく音楽は、おおよそ、このどちらかの傾向を持っているのではないだろうか。
    坂ノ下さんのギターソロアルバム『HORIZON』は、わたしにとって「鏡の音楽」。ギターの音色が自分の内部で反射を起こし、感情のさまざまな場所を暖かく照らし出してくれる。(文:AOKI, hayato)

【 AOKI, hayatoファンに聴いて欲しいアルバム 店主 選/文 】

  • バード&ギボンズ:作品集 グールド(p)
    実際に青木さんから教えてもらった作品。グールドのあまり知られていない盤という珍しさも含みつつ、クラシック・マニアでない人にとってのグールド入門あるいはルネサンス音楽入門の定番となるべきもの。ジャケットデザインの美しさにも注目。すでに雨と休日のベストセラーのひとつとして定着しており、青木隼人が雨と休日にとって重要なブレーンであることの証明。
  • 吉村弘 / Music For Nine Post Cards
    初めて出会ったのは津田貴司とのユニット「ラジオゾンデ」で。そのころから常に音楽の話題にあがっていた吉村弘。70〜80年代のニューエイジ〜環境音楽のフィールドは、フォーク・ミュージックとともに青木隼人にとって重要なルーツのひとつ。入手困難だったものが近年になり再発、そして当店で取扱いさせていただいている経緯には運命的なものを感じずにいられない。

【 haruka nakamuraファンに聴いて欲しいアルバム 店主 選/文 】

  • Keith Jarrett / The Melody at Night, with You
    ふと手にしたscholeのフリーマガジンでこの作品をレコメンドしていたのが、ハルカナカムラというアーティストとの最初の接点。その後『grace』を聴き、『twilight』発売時に初めて会い、現在に至る。その間ずっと、通奏低音のように流れていた。彼や彼を取り巻く音楽シーン、そして彼のファン、いずれにとっても重要な1枚となるべき作品。
  • マショー:モテット集 ヒリヤード・アンサンブル
    『12 & 1 SONG』やその後の活動で見られる教会という場への憧れ、古今東西の祈りの音楽への共感。そういったことを彼の音楽から伺うことができ、そしてこのような古い宗教音楽への繋がり=文脈が生まれる。音楽は近い過去よりも遠い過去のほうが共通する部分が大きいことがある。祈りの気持ちは今も昔も変わらないはず。