「場所と響き」 〜ラジオゾンデ・インタビュー

雨と休日のインタビュー・シリーズ第2回は、セカンド・アルバム『radiosonde』をリリースするラジオゾンデのおふたり、津田貴司さんと青木隼人さんにご出演いただきました。ラジオゾンデがその演奏のベースとしている、まわりの環境音を取り込み、それによって変化していくという音楽作りについてお話を伺いました。
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  • ラジオゾンデ ----
    ふたりの音楽家、津田貴司と青木隼人によるユニット。「響き/聴こえ」を主眼においた音楽活動を展開。アルバム製作においても、ライヴ演奏においても、空間/環境との対話を重視した演奏を行なっている。2009年3月STARNET MUZIKよりファースト・アルバム『sanctuary』*1をリリース。各地でのライヴ活動を経た後、セルフタイトルとなるセカンド・アルバム『radiosonde』*2をflauより2010年5月にリリース。ちなみにユニット名となっているラジオゾンデとは気象観測に使われる気球のこと。


  • *1 『sanctuary』


    *2 『radiosonde』

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■ I. 音楽的原点からラジオゾンデ結成まで ■ 「科学と叙情」

- まず、ラジオゾンデの音楽スタイルがどうやってできていったのか、という点が、私を含めリスナーの方も気になるところだと思います。おふたりの音楽的なルーツから聞かせてください。

青木:音楽活動の原点…ギターは中学生の頃から弾き始めました。 高校から大学にかけては友人たちと音楽活動を続けていて、自主的にイベントをおこなったりしていて、音楽は途切れなくずっと身近にありました。自分の演奏スタイルが今の形に近づいてきたのは2001年頃です。ちょうどそのころ音楽の講座に通う機会があり、そこで出会った人や出来事の影響は大きいと思います。またギターソロのCDをレーベルを作ってリリースした頃から、音楽以外の活動をしている方…画家や陶芸家の方たちと出会うことも多く、彼らの作るものや生き方にも触発されました。

津田:僕は、大学時代にコンテンポラリー・ダンスの活動をしていて、そこから徐々に、踊るよりも空間そのものを創り上げていきたいと思うようになりました。やがて音も含めたインスタレーション作品を作るようになりました。小さい頃から周りの音を聴くのが好きだったんです。窓を開けて外の音を聴くんですが、気配の変化する感じや、晴れてきたら鳥の鳴き声が変わるとか、そういったものに耳を傾けるのが好きでしたね。それが、ラジオゾンデを始める前にやっていた『游音(ゆういん)』というイベントにつながっていきました。その頃は、主にラップトップで即興演奏をしていたんです。

- おふたりの出会いはsawakoさんのアルバムだそうですね。

  • 青木:2003年の秋にsawakoさんの『yours gray』*3の録音に誘われたのですが、その現場で初めて津田さんと会いました。sawakoさんが共通の知り合いだったんです。

    津田:その後、若干ブランクがありまして。1年ぐらい経ってからお互いのライヴを観に行ったりして、一緒にやってみようということになりました。初めは僕のラップトップ演奏の中に青木君のギターが浮かんでるイメージを持っていたんですが、やってるうちにいつのまにかギター・デュオという形になっていました。ラップトップを使ったのは初めの頃だけで。たまたま僕がオープンチューニングでギターを弾いていて、青木君もオープンチューニングだったので、キーをDで合わせた感じで。それで即興でもいけるよ、という流れになって。


  • *3 sawako / yours gray 2004年リリース。現在廃盤。ラジオゾンデのふたりは演奏はせず、収録曲「Cache Cache」での録音を担当。ラジオゾンデはその後もsawako作品に参加。sawakoのMySpaceはこちら。
  • 青木:基本的にラジオゾンデは津田さんのコンセプトなんですよ。ユニット名も津田さんからの提案で。気象観測気球である「ラジオゾンデ」って言葉で語れる部分はけっこう津田さんが支えているんじゃないかな。津田さんがソロアルバム*4のタイトルなどで気象用語を使っていたから、気象用語をユニット名にするのもいいんじゃないかという話になって。

    津田:始めてみたら、その名前にしばられた訳じゃなかったんですが、ラジオゾンデという言葉にインスピレーションを求めた部分もありましたね。


  • *4 hofli / Biometeor 津田氏のソロユニットhofli名義での2004年CD-R作品。Biometeorとは生気象学(せいきしょうがく, Biometeorology)から取った造語。

- と言うと具体的には?

津田:ラップトップでは、すごく科学的な発想で音が出るまでのプログラムを組むわけです。旅行先で録音してきたような自然音を音源として使ってたりしたんですが、音が耳に流れてくるまでの過程をあれこれ考えると叙情的なものを感じたんです。どこかで水滴が落ちて、その音が風に乗って鼓膜を震わせ、それが音階に聴こえる、とか…だから、科学と叙情だなと思って。

- 「科学と叙情」!いい言葉ですね。気球のラジオゾンデも、遥か上空を漂う浪漫のような叙情性を持っているように感じます。

青木:ラジオゾンデの音楽を先に知っていて、後からそれが気象観測気球の名前に由来していることが分かったときに、僕らのやってる音楽と照らし合わせて「ああ、なるほど」と思うものでしょうか?

- 私はそうでした。

青木:じゃあ、いい名前を付けたんだなと思います。よかった(笑)。

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