雨と休日のインタビュー・シリーズ第8回。今回ご登場いただくのは、ドイツ在住の若き音楽家、トビアス・ヴィルデン。ギター作品『A Path To Open Air』『Minute Maps』をCD化*1し、雨と休日店主・寺田がライナーノーツを担当させていただきました。その際に行なったメール・インタビューの内容を公開いたします。
(※本文中の注訳にあるCDは、ジャケットをクリックしていただくと商品ページへジャンプいたします。)
- 誕生日を教えてください。
Tobias:1990年9月24日生まれ、23歳です。
- 出身は?
Tobias:ドイツのヘッセン生まれで、今はドイツの北の沿岸にあるブレーメンハーフェンの近くの小さな街に住んでいます。
- 音楽を作り始めたのはいつからですか?
Tobias:2009年初頭から音楽を作り始めました。
- ギターとピアノは正式な音楽教育を受けていますか?
Tobias:ギターもピアノも独学です。音楽教育やクラシックの訓練を受けた事はありません。
- どんな音楽やアーティストから影響を受けましたか?ギターとピアノそれぞれお答えください。
Tobias:ギターは、過去50年の間の様々なジャンルのフィンガー・スタイルやインストゥルメンタル・アーティストたちから主に影響を受けています。フォークのニック・ドレイクやデヴィッド・クロスビーから、ニューエイジの詩的でメランコリックなカーキ・キングの初期のギター作品などから影響を受けて自分自身の歌や楽曲の作曲に興味を持つようになりました。また、僕が現在使っているオープンでアンビエントなサウンドへの挑戦は、たくさんのクラシックや現代音楽のコンポーザーたちからの影響です。
ピアノも様々なクラシックやジャズのピアニストから影響を受けています。一番影響を受けたのは、多分、印象派作曲家のドビュッシーとラヴェルです。でもエリック・サティのミニマル・サウンドや、さらにビル・エヴァンス、エロール・ガーナー、ジョニー・コスタのイマジネーション溢れる即興や自由で流れるようなジャズ・ピアノにも大きな影響を受けました。(もちろん彼らの熟練した素晴らしい演奏と僕は全くかけ離れていますが、彼らの奏でた楽器のサウンドに影響されて、ピアノという楽器を選んで作曲してみようと思ったのです。)
- Bandcampでリリースしている4枚のアルバム以外にディスコグラフィーはありますか?
- “A Path To Open Air”と“Minute Maps”は6弦のスティールギターを使ったのですか?どんな機材を使ってアルバムを作ったのですか?
Tobias:そうです、6弦のスティールギターで両方のアルバムを作りました。“A Path To Open Air”は、マルチトラックの楽曲で、アコースティックギターを重ねて録音していきました。いくつかの曲はマンドリンも使っています。Zoomのモバイルレコーダーやマイクで録音して、LogicとGaragebandで編集やミックスをしました。
- ”Minute Maps”と”A Path To Open Air”のアルバムについて教えてください。
Tobias:”Minute Maps”をレコーディングする前にたくさんの旅をしました。そのときの僕の経験にアルバムのテーマを結びつけたのです。アルバムタイトルが暗示するように、それぞれの曲は僕の旅の途中で出会った出来事、ロケーション、風習などの一部を表す短いサウンドスケープになっています。どの旅も「Uncertainty」(不安)な感情から始まり、「Discoveries」(発見) が続き、短い印象「Passing Through」(通過)、大きく破滅的で混乱だらけの街「City Narrows」(街の細い道)、人々、「Conversations」(会話)を通り過ぎ、最後には見慣れた場所「A Landscape Well Known」(良く知っている風景)に戻り、また他の国や文化に憧れる気持ち「Notions Of Distant Place」(遠い場所の心象)になります。それぞれの詳細を何も盛り込まなかったのは、自由に解釈するために、曲がどこをベースにしているかというアイデアから離れたかったのです。"Minute Maps"はスティールギターのソロ作品で、音を下げた変則チューニングのみを用いています。
”A Path To Open Air”はいろいろなテーマをミックスしたもので、よりシンプルなものです。曲のタイトルはほとんどが自然や風景をテーマにしています。でもそれぞれのリスナーの物事に対する個人的な見解で意味をとってもらえるようにもしてあります。そして、ここにも憧れの感覚があります。僕が心に持っていたアイデアとテーマを複数の楽器で最良の演奏をしたかったので、最初からマルチトラックで録音したアルバムを作ろうと思いました。僕はきらきらとした感じの変則チューニングを用いたのですが、これはより良い雨の風景を作り出すの役に立ちました。例えば「Downpour」や、凍えるような寒いムードの「Frozen Night」で使っています。
- マスタリングは誰がやっていますか?
Tobias:僕がやりました。GaragebandやAdobe Soundboothを使いました。
- 音楽以外はなにをしていますか?
Tobias:音楽以外に僕はフォトグラファーをやっています。例えば、アルバムのアートワークの写真は主に僕が撮影したものです。仕事は写真の編集やスクリーンデザインをしています。音楽制作のために写真のほうはあまりやらなくなってきてはいますが。でも僕が他にする事もアーティスティックな仕事からはあまり離れないと思います。
- 普段の生活のなかで音楽創作に影響する物事はなんでしょうか。
Tobias:すぐに何かから影響を受けたと意識的に気づくことはあまりないのですが、たしかに日常生活の中からたくさん影響されて、あるメロディーやまるごと1曲できることもあります。影響は、場所から天候、自然、人々との会話にまで及びます。アルバムのテーマを選ぶ時と同じですね。特に僕が写真をはじめてから、旅をしている時はいつでも、目と耳を全ての興味深いものにオープンにしようとしています。
- フォトグラファーでもあるあなたにとって、アートワークも作品の重要な要素ですか?
Tobias:もちろんです。シンプルな見た目にもかかわらず、僕はアルバムや曲のムードに合わせるために、確実にたくさんの時間をついやして写真を選んで編集しています。僕が何かを発表しようと決めた時、プレゼンテーションはもっとも重要なものの一つです。
- あなたの音楽はとても静かですが、静かな音楽についてなにか考えた事はありますか?
Tobias:僕は自分の音楽をカテゴライズしないようにしていますが、曲を書く時は、基本的に繊細で多義性のあるアプローチを好みます。静かでBGMのようにも聞こえるけど、深く聞き込むともっといろいろな事が明らかになるような。僕は”はらはらするような静けさ”を楽しんでいるんです。たまに聴いても長く聴いても飽きない、でも、シンプルな表面の下に複雑な構造を持つもののほうが、聴くたびにより細かなディテールが明らかになっていくと思います。
(2014年8月 メールインタビューにて)