《13周年企画・高木正勝『静かな雨』CD化のお知らせ》

 


高木正勝『静かな雨』
QSGM-003 3,300円(税込)
2022年3月19日発売

 

雨と休日13周年の記念企画として、配信だけでリリースされていた高木正勝作品『静かな雨(オリジナル・サウンドトラック)』をCD化します。

『静かな雨』の音楽は、一筆書きのように即興でプリペアド・ピアノを演奏しました。
映画本編を最初から最後まで見ながら弾いたので、映画とセッションしているような、自分も登場人物のひとりになったような気持ちでした。
映画を観てもらえると直ぐに気付かれると思いますが、足を引きずる音、たい焼きを焼く金属の音、自転車が倒れる音、雨や川の音、町の音などが、台詞以上に心に響いてくる映画だと思います。
これらの音と共にこの映画の世界をつくることができればとピアノを奏でたので、楽器を演奏しているというより、物音を立てているような、雨音のような、空気のような、隙間だらけの音楽になっています。
スピーカーでぼんやり鳴らしてもらうと、周りの音と混じって面白い効果が現れるかもしれません。

高木正勝

「ひとつの音楽作品」としてのサントラ『静かな雨』

はじめ、映画を観るよりも先にサントラを聴きました。(註:「サウンドトラック」は厳密には映画に存在するすべての音を指しますが、ここでは「サントラ」として作られた音楽部分を指すこととします)

特に前半にその音色を顕著に聞くことができるプリペアド・ピアノ(弦に物を挟むなどして音色を変えるピアノ演奏技法)を駆使しながら作られた曲には、打音や不協和音に伴う不安感のようなものがありましたが、例えば屋根に降る雨の音のようにも聞こえました。人の生活の中には心地よい音ばかりがある訳ではありません。

時折、甘美なメロディが現れ出ると、日常の中に訪れる嬉しい瞬間のように聞こえました。先鋭的な部分がありながら突き放したものではなく、身近に感じられる心地よさがあるサントラだと感じました。

そしてこれは単純に映画に付随するサントラとしてでなく、始めから終わりまで通して1枚の音楽作品として聴くに値するものだと感じました。それは、思いつくままに羅列すると、坂本龍一『トニー滝谷』や細野晴臣『銀河鉄道の夜』、ミシェル・ルグラン『ロシュフォールの恋人たち』、武満徹『波の盆』、牛尾憲輔『聲の形』といった傑作群と並び評されるべき、アーティスト(作曲家)のオリジナル・アルバムと捉えてしまってもいい作品だと。

13周年企画でどんなアーティストの作品をCDとして作ろうかと考えた候補の中に『静かな雨』が急浮上。高木さんとはそれまで面識がなかったのにも関わらずCD化に対して快諾いただき、制作を進めることができました。

映画『静かな雨』における音楽の役割



サントラを聴いた後に映画を観ました。そして映画『静かな雨』における高木音楽の重要性について再認識しました。高木氏はこの音源を「映画の始まりから終わりまで観ながら即興演奏した録音」と語っています。高木氏は初め、この映画に音楽は必要ないと感じたそうです。それほど、映画の中にすでにあった音(足音、物音、自然音など)に存在感があり、そこに音楽を付けるならどんなものが良いのかという試行錯誤から、映像を見ながら即興で演奏という試みになり、その最初の録音が最終的に多く使われることとなったそうです。

結果的に、日常の雑音のような側面と、静かな愛の物語としての側面。その両方があるサントラとなりました。

映画を観終えたと同時に、やはりこのサントラは映画と切り離しても成立しうる作品だと確信しました。それは単純に楽曲自体のクオリティが高く映画のBGMにしておくのはもったいない、という評価ではなく、サントラ全体に統一感があり、生活の中に流れていても違和感のない日常性があったからです。そしてCD化の際にはアルバムタイトルを「静かな雨」だけにし、「オリジナル・サウンドトラック」という表記は付けないことにしようと決めました。(ジャケットには表記があります)

『静かな雨』というアルバムを楽しむには、映画を観ても観なくてもどちらでも構いません。音楽だけを聴いて、曲名を見て、普段音楽アルバムを聴くのと同じように独自のストーリーを仕立てるのも楽しみ方のひとつでしょう。

ジャケットデザインについて

さて、CD化にあたりジャケットのデザインはミュージシャンでもある青木隼人に依頼しました。自作他作多くのデザインを手掛ける彼のCDデザインの特徴は、手に取る「物」としてのデザイン性のみならずCD本来の特徴である機能性/利便性をも両立させている音楽愛(円盤愛)に満ちている点です。ジャケットに採用された絵は高木氏の奥様、美香さんによる作品「Spring Sap」。青木隼人の『日田』や森ゆに『山の朝霧』などですでに実用されている封筒型のジャケットに、今回は箔押しのデザインを表面から裏面に渡り大胆に施しています。

高木正勝が作り出す音楽

高木正勝の音楽にはどんな作品でも常に有機的な輪郭を見ます。それは例えば木の幹や枝のようだと思っています。曲がりくねって伸びた幹や枝に対して我々人間は、その成長過程(音楽なら制作過程)を知ることはなく、成熟した完成された姿を見る(聴く)のみです。一曲一曲が一本一本の枝のように存在し、それがひとつの木の姿となります。

近年のライヴ・アルバムのように感情をおおらかに発散させた高木作品とも、『マージナリア』シリーズとも、そしてアニメやドラマの高木サントラ作品ともまた違ったサウンドを聴ける本作。

『静かな雨』でも、長短26曲の集まりがひとつの大きな流れを作っているかのようです。映画(原作は宮下奈都著)の物語はふたりの男女の恋物語…というよりお互いに寄り添って向き合って生きていく様の時間の物語、というべきもの。高木正勝自身がサントラ用に付けた曲名を見ると、宇宙や時の流れというものを感じさせ、映画の物語とはまた別の物語があるようにも感じられることでしょう。

発売日について

発売は3月19日。雨と休日のみでの先行発売です。
先行…ということはつまり、当作品は他の雨と休日自主リリース作品と違って一般発売も限定数で予定しております。一般発売は4月末頃の予定です。
 

サントラの枠を超えた広がりを持つアルバム『静かな雨』。美しいジャケットとともに、リスナーの皆さんの部屋を彩る音楽作品となれたら幸いです。(店主/寺田俊彦)


ametokyujitsu ? Silent Rain [teaser]



高木正勝『静かな雨』商品ページ(購入はこちらから)
雨と休日オリジナルリリース作品一覧

映画『静かな雨』公式サイト
高木正勝オフィシャルサイト

 

卸について

今回の作品も個人店向けに卸販売をおこないます。ご希望される店舗様は問い合わせフォームよりご連絡ください。 他の雨と休日オリジナル作品『静寂の隣人たちへ』『Sakanoshita Norimasa / meditation in the shelf』も同様にオーダー可能です。