伝統と洗練。柔らかく響く歌声。エストニアのシンガー・ソングライター、マリ・カルクンの2010年セカンド・アルバム。
ピアノやギターのシンプルな伴奏。そして伝統楽器カンネル(ツィター系の楽器でフィンランドのカンテレと同種)の乾いた美しい音色(03「Vihmakosolo」の冒頭)。エストニア語(多くはエストニアの少数派言語であるヴォル語やセト語)の柔らかな言葉の響き。ロシアと北欧の中間 ― バルト三国の一番北に位置し、フィンランドとの文化的近似性もあるエストニアという国に、こんなにも優しい歌があったとは、と驚かされる作品です。
アルバム・タイトルを英訳すると「Dear Rain」。歌詞の大半は同郷の詩人による作品を引用しており、自然や日々の生活を題材に、生きることへの本質を問う福音のような詩が並びます(ちなみに09「Koduvana puhendus」の詩はトーベ・ヤンソンのもので、あの「ムーミン」からの引用)。ほぼ全ての曲をマリ・カルクンが作曲していますが、エストニアの民族音楽の伝統を踏まえたうえで欧米のポップスを昇華した、洗練されたメロディが素晴らしく、どこか懐かしさも持っているところが彼女の作り出す音楽の魅力だと言えるでしょう。
01. Loomine
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02. Hommikuvalge
03. Vihmakosolo
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04. Undson ilman
05. Maalapsekas
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06. Riinukese valss
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07. Tuulo kaen
08. Kevadel metsas
09. Koduvana puhendus
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10. Vilu oo
11. Tuloq, tuloq, rasso uni
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total playing time: 46:42
歌詞の日本語訳付き。雨と休日店主/寺田がライナーノーツを担当しました。
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