「青木さんと会ってみたい。一緒に演ってみたい。」2011年の暮れだったろうか、今いちばん気になるミュージシャンは?という話題になった際に、ハルカ君の口からそう発せられた。その共演が実現したらすごいことだ、そして、いったいどんな音楽になるのだろうか、という果ての無い期待が僕の中で広がっていった。タイミングよく翌年の雨と休日の3周年記念にライヴ・イベントを画策していたところだったので、じゃあ、ということで二人の初共演の場を自分が作ることとなった。
ふたりの演奏を聴いたとき、本質というか、目的地のようなものを僕は感じた。あぁ、彼らは演奏することによって自分たちのルーツを探しているんだ、と。日本のミュージシャンが折に触れ突き当たる、強固な音楽伝承文化のないこの国で音楽を作っていくことの不安定さ。その難しさに立ち向かっているのだ、と。出会うべくして出会ったような相性の良さを感じたし、音を発すること、間を作ることで分かり合うという、その事実をまじまじと見せつけられた思いだった。届けられたアルバムのタイトルが「フォークロア」であったのも納得がいく。東京と青森。別々の場所で生まれ育ったふたりが、今この時に出会い、同じ方法で還る場所を探している。それは強大で確かな奇跡と言いたい。やがて辿り着く場所が別々であったとしても、だ。(文:店主)