木太聡とクラシック音楽

音楽家・木太聡は、もともと倉敷でピアノ教室を開きながら音楽活動を始めていました。彼とクラシック音楽とは深い部分での繋がりがあり、その作風にも(見えるところと見えないところとに)影響を与えていることがわかります。

作風はもちろんのこと、実際に彼が演奏する楽器は、古いピアノ、トイピアノやコンサーティーナ(アイルランド音楽に使われるアコーディオン)、鈴などの様々な打楽器といった、既存の音楽ジャンルの枠に囚われないものです。今回挙げていただいた作品よりももっと幅広い音楽の素養が、その音楽のベースとなっていると感じさせます。

木太聡 / A sleeping forest "baroque knot"

2019年の新作『A sleeping forest "baroque knot"』では、バロック音楽を独自に解釈して演奏していますが、その解体と構築の才を見ても木太聡の底の知れぬ魅力に惹かれることでしょう。

今回彼が愛聴する、または彼の琴線に触れたクラシック音楽作品を以下に紹介させていただくこととなりました。木太聡という謎を秘めたアーティストの本質に近づく一歩としても、是非お楽しみください。

木太聡が選ぶクラシック音楽(文:木太聡)

  • The Late Recordings Vol.2 アルフレッド・コルトー(ピアノ)
    アルフレッド・コルトーは音楽学生時から憧れ、文字通り、レコードを擦り切れるまで聴いてきた最高のピアニストです。コルトーの晩年の録音は、人の深みの到達点に感じられます。彼の様に弾けずとも、せめて同じ様に歳を重ねたい。
  • Lore-Ley II - Deutsche Volkslieder fur Frauenchor
    ドイツ・クラシック曲の根源、ドイツ民謡、女性合唱が心地よいです。気取らずに聞き、共に口ずさめる愛らしい作品。収録曲シューベルトの《菩提樹》は原曲の新たな一面を教えてくれます。
  • ハイドン:弦楽四重奏曲 第25・26・28番 コダーイ・クァルテット
    ハイドンの音楽は熱を帯びず、静かに時の流れのまま過ぎ行きます。彼らの演奏も淡々として、音楽を体現しています。
  • ソル:ギターのための練習曲全集 エネア・レオーネ(ギター)
    ギターのベートーヴェンとも呼ばれる作曲家のソルの、練習曲集でありながら、レオーネの技術のみならず、情感ある弾き方が、在るはずのない物語を紡ぎます。それぞれの曲は単純で易しく、受けとるは主題、本文のみの手紙。私には理想です。
  • ヴァイス:リュートのためのソナタ集 第7集
    中・低音域、古楽器の音を堪能できる素晴らしい作品。音域を正しく認識し扱うことは、作品・楽器の可能性をどれほどにも高めてくれることだと、ヴァイスは教えてくれます。
  • バード&ギボンズ:作品集 グールド(ピアノ)
    ピアノでの録音ではありますが、古楽曲を知る方法としては、かえって最善の選択なのかもしれません。そこから古楽器を聴いているような空気に溢れています。
  • Akira Uchida / Silent Prayer
    大変私的な意見ですが、クラシック、またはそれに準ずる楽曲に臨む彼の姿勢、意見は同じ奏者、作曲者の立場から申し上げて、素晴らしい価値ある作品です。いわゆるクラシック音楽にはある側面から見て大きく欠点があり(勿論どのジャンルの音楽にも同様の事が言えると思いますが、緻密が故、聴き手の姿勢によっては強いノイズになってしまう、等)、この作品はそれを補ってあまりあるものであると感じます。