これは伝説の物語のつづき。1970年にわずかな枚数しか流通されなかった
『Just Another Diamond Day』を残して音楽業界から遠ざかっていたヴァシュティ・バニヤンが、2005年、実に35年ぶりに発表したセカンド・アルバム『Lookaftering』。ロックの波に埋もれてしまったその繊細な歌声は、時代を超えて21世紀の耳に届いたのでした。
彼女を再評価したディヴェンドラ・バンハートをはじめとする所謂「フリー・フォーク」と呼ばれた若い世代のアーティストが録音に参加し、その後ポスト・クラシカル・シーンでもっとも有名な作曲家のひとりとなるマックス・リヒターがプロデュースを担当し、そしてそのすべてのスタッフがヴァシュティに最大級のリスペクトを持って作り上げた本作。歌の内容としては1stと同じような内省的な詩情が込められたものですが、少女が夢見た幻想的な世界を描いたような前作よりも現実的な説得力を持った作品になっているところが、35年という年月が彼女にもたらした賜物なのだと想像できます。また、歌手活動の再開に際してギターを息子からプレゼントされ、画家である娘ウィン・ルイスにジャケット画を描いてもらったというそんな微笑ましい話を聞くと、アーティストとしてだけでなく母親としても素晴らしい人間性を持っているのではないかと思うのです。凍える冬を乗り越え、暖かな春が訪れるような安らぎを感じさせてくれるようなアルバムです。
[ Disc 1 ]
01. Lately
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02. Here Before
03. Wayward
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04. Hidden
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05. Against The Sky
06. Turning Backs
07. If I Were
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08. Same But Different
09. Brother
10. Feet Of Clay
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11. Wayward Hum
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[ Disc 2 ]
01. Lately (Live, The Echo, Los Angeles, 2006)
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02. Here Before (Demo, 2005)
03. Wayward (Alternative take, 2005)
04. Hidden (Demo, 2002)
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05. Against The Sky (Demo, 2004)
06. Turning Backs (Demo, 2003)
07. If I Were (Demo, 2001)
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08. Same But Different (Demo, 2005)
09. Brother (Demo, 2002)
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10. Feet Of Clay (Demo, 2002)
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total playing time: 35:35/31:19
アルバム・リリース20周年、そしてヴァシュティの80歳を祝うかたちでリリースされた2025年エクスパンデッド・エディション。ディスク2にはデモ音源、ライヴ音源、別テイクが収録。またこのエディションには、ヴァシュティ、プロデューサーのマックス・リヒター、デヴェンドラ・バンハート、デイヴ・ハウエルによる回想的なスリーヴ・ノーツとウィン・ルイスによる数点の絵が掲載された20ページの歌詞ブックレットが付属しています。